”山メシ”への目醒め:大菩薩嶺(1)
はじめてまともな登山をした頃の話をひとつ。
初めて「百名山」と呼ばれる山に足を踏み入れたのは大菩薩嶺でした。
■大菩薩嶺(2,057m)
奥秩父山塊に位置し、大菩薩連嶺の主脈を構成。
(Wikipediaより一部抜粋)
それまで、2,000m級の山なんて登った事もなく、
「百名山って何?」って感じだったんですが、友人の誘いもあり
流れるように”山の世界”に足を踏み入れたのでした。
まだ極めて不摂生な生活を送っていた当時、
前日金曜の酒の匂いを残しながら、土曜朝一から登山に挑む、という、
完全に山を舐め腐っていたのがいまとなっては懐かしい。
山はペース。1にも2にも、ペース、ということを学ぶ。
さて、そんなこんなでスタートした”初百名山”登山。
山行のパーティは4人。ほぼ全員初心者という、なんとも初々しいパーティーでした。
どれくらい初々しいかと言うと、
パーティの中でも一番の経験者が2000m級の登山をその時点で2回ほど。
そして話を聞けば、無邪気にトレッキングシューズでアルプスを攻めちゃっていた
くらいのヨチヨチ感。(案の定、下山中に足をぶっ壊したらしい)
完全初心者の僕を前にして、彼らも彼らで、そんなつらすぎる経験を経て、
今度こそ、とバッチリ登山靴を買って挑んだ、リベンジ戦に僕がのこのこお邪魔したのでした。
”水を得た魚のよう”、という言葉はよく出来た言葉で、
トレッキングシューズで死ぬ思いをした連中が、その感覚の覚めないうちに
登山靴を履くと、気持ち良いほどガンガン行けるらしい。
そりゃもう、今思えば登山開始直後からガンガン攻めてました。
僕の登山開始直後の感想はこうです。
「と、登山ってそんなに飛ばすもんなの?死なない?」
登山のペースってこんなもんなのかと。
僕の体力がないのかと。こりゃえらいものに手を出したなと。
「はい、ギブアーーーーップ!」と、半ば心が叫びかけたその時、ふと先頭のKくんが足を止めて呟いたのでした。
「ちょっと・・・・・はぁ・・・・・や、休もうか・・・てか、速いよね?」
だよねーーーー!と。
そうなんです。後から聞いた話ではそのとき全員が全員そう思ってたと。
でも、登山靴が快適すぎて、足が止まらなかったんだと。(先発ペースメーカーのKくん)
これはですね、初心者の登山においては結構な落とし穴だと思います。
勾配と、そのときのメンバーの体力・体調等にもよりますが、登山のペースはゆっくり過ぎるくらいが丁度いいと思います。
好日山荘ガイドコラム(以下参照)によると、感覚としては以下の試算ができるとのこと。
「平坦な道を歩く速度は毎時4km が普通とします。水平距離を1km歩くのに必要な時間は15分位のはずなのに、高度差300mを登るとほぼ一時間かかります。この時、山登りは時速1kmと考えるのではなく、(一般登山道での「標準的な目安」として、)水平距離1km=15分、垂直距離100m=15分(垂直距離300m=45分)という様に一時間=60分=(15分+45分)に分解して考えます。更には急な登山道は垂直距離100m=20分で割り増す」
頭で考えると小難しいですが、
登山開始からはまずはゆっくり過ぎるくらいのスタートで、
メンバーの体力と残りの行程を加味しながら、時折ペースを変えていくイメージでしょうか。
我々もいまとなってはある程度の登山経験も積み、
おかげさまでここのペース配分はメンバーあうんの呼吸である程度調整できるようになりました。
今の平均のタイムは公式の登山時間よりも、きもち速めに目的地に到着、という感じが多いように思います。
さて、大菩薩。
序盤のペースに反省した我々は、ダウンしたKくんから、
パーティーの中で一番ペース配分のセンスがありそうなMくんにペースメーカーをチェンジ。
「いいから、ゆっくりいこう、ゆっくりで」
を合い言葉に、前半のトラウマを忘れるように、ゆっくり、ほんとにもう過剰なくらいゆっくり歩を進めたのでした。
(※その後、Mくんはこれをきっかけに我が隊不動のペースメーカーとしてポジションを確立することになる)
”山メシ”への目醒め:大菩薩嶺(2)へ続く